会社設立の注意点

 数年前に比べると、設立手続きは簡素化され、資本金規制もなくなり、役員が一人でも気軽に設立ができるようになりました。その一報で、 株式会社の設立することによるメリット・デメリットは数多くあります。そのメリット・デメリットを解説しますので、会社を設立したい方はよく読んだ上で、自分にあった判断をしたいものです。

 私は利益追求主義ではありませんが、利益をきちんと上げられるビジネスモデルになっていれば、法人化のデメリットはほぼ気にならないと思います。売上が上がらず、利益がでないビジネスモデルの場合、法人化の運営ははかなり苦しいものになります。法人化の見極めは、きちんと利益が確保できるビジネスなのかをしっかり判断する必要があります。

会社設立のメリット

メリットその1 信用が高くなる

一般的には、 社会的信用が増す 個人事業主での営業よりも、会社形態の方が取引先や金融機関等の信用度が得やすいと言われています。 株式会社は全部履歴事項証明書といって、法務局で得られる資料で、資本金や役員、本社の住所を登記で示すことができるので、利害関係者(取引先や債権者、顧客)からの信用も得やすく、また、社会的にも信用度は高くなります。

メリットその2 許認可等が引き継げる

よくあるのが、個人事業主で許可を取ってしまうと、代表が死亡すると許可の継続ができなくなってしまうということです。

 法人の場合、社長が亡くなっても許認可等がなくなることはありません。もちろん、許可の条件で社長個人の免許等が条件になっていると継続できなくなる可能性もありますが、それでも、すぐに免許がなくなるわけではないケースの方が多いので、免許を雇う人を雇用するとか、若干の時間的猶予は残されていると思います。許認可を使って商売をされている方は、法人化した方がメリットも多いでしょう。

メリットその3 法人格でないと参入できない事業もある

そんなに多いわけではないのですが、法人だけが受けられる補助金や参入できるビジネスがあります。補助金等は毎年募集要項が変わるため明言は避けますが、公共事業に近い事業では、例えば老人ホームや幼稚園等は、そもそも法人格がないと参入できないケースもあります。

  法人格の問題だけで、商売が始められない、補助金がもらえない等のチャンスロスがありえますので、十分に始める前には調査を行いたいですね。

メリットその4 社会保険に加入できる

法人化することで、代表者や、代表者の配偶者も社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入することができます。個人事業主の場合は、従業員は社会保険等に加入することができますが、個人事業主自身は、社会保険(国民健康保険・厚生年金保険)の被保険者になることはできません。 社会保険料は、会社の負担が増えるというデメリットもありますが、保険料の会社負担分は会社の経費になりますし、健康保険の手厚い給付や、国民年金より手厚い年金を受け取れるようにもなり、メリットも少なくありません。 健康保険・厚生年金に加入することは、介護・育児給付、障害年金など、福利厚生の面においても大きな違いがあります。

メリットその5 税金の負担が軽くなる

 個人事業の場合、所得税は累進課税で課税されますが、 法人税は売上に関係なく税率が一定ですので、年間所得が一定の金額に達した場合、会社を設立した方が税金面で有利になります。 個人の場合、最高で住民税・所得税の合計55%に、事業税の5%です。 法人の場合、最高でも約41%なので、個人事業主で、ある一定ラインを超える収入がある時は、法人化した方が節税のメリットが大きくなります。

 また、法人化することで、最長2年間の消費税の免税を受けることも可能になります。仮に、消費税の課税事業者である個人事業主が、会社を設立して法人成り(法人化)したとしても、新会社の設立時の資本金が1000万円未満であれば、通常の会社設立をした場合と同じように、消費税の免税事業者としての特典(メリット)を受けることができます。

 さらに、個人事業の場合、経営者が亡くなれば、個人財産、事業用財産などすべてが相続の対象となるために、相続税がかかってきますが、法人化して法人が所有している資産には相続税がかかりません。

 赤字の申告の繰越控除も違います。個人事業主の場合は3年間ですが、法人の場合は9年間まで赤字の繰越が可能になります(いずれも青色申告である必要があります)。大幅な赤字を計上しなければいけない場合、法人の方が圧倒的に有利になります。

 減税の措置は法人化されることで得られるものも沢山ありますが、その会社の事業実績や事業内容、役員の報酬等にも左右されますので、一概に有利不利とは言いにくい部分があります。なので、個別に精査してみないと、どういうメリットがあるのか難しい部分もあります。当事務所にご相談いただければ、節税に詳しい税理士をご紹介いたしますので、どうぞお気軽にご相談ください。

メリットその6 決算期を変えられる

  個人事業の場合は年に1回、1月1日から12月31日までと決まっていますが、株式会社の場合、決算期を自由に決めることができます。 また、株式会社の場合、設立後においても、いつでも決算期の変更も可能です。 

 つまり、これは株式会社の決算時期を戦略的に考えて、会社を運営できることを意味します。例えば、仕事の閑散期に決算を持っていくことで、繁忙期の作業を減らすこともできます。また、納税を考慮に入れて、資金繰りの余裕のある時期に決算をすることで資金繰りを楽にする方法も考えられます。

メリットその7 役員の給料が経費と認められる

 個人事業主の場合、自分の給料が経費として認められません。でも、法人化すれば、給料(役員報酬)や退職金までも経費に算入できます。個人事業主の方が、どうしても事業に必要な費用と生活費が曖昧になり、生活にいくらかけられるかが分からない、といった状態にもなりがちです。しかし、会社を設立し法人化することで給料が支払われるとなれば、仕事とプライベートのお金を明確に分類しやすくなります。

法人化のデメリット

デメリットその1 維持費がかかる

 法人化の最大のデメリットは、維持費です。ひとつは、均等割りと言う地方税になります。資本金が1,000万円以下ですとおよそ6~8万円、1,000万円超ですとおよそ16~20万円の税金が毎年かかります。法人税・法人地方税は黒字の場合に生じるのが基本ですが、この均等割りの部分に関しては、たとえ利益が出ていなくてもかかってしまうため、最低限の法人の維持費と考えられるのです。また、株式会社の場合には、一定期間ごとに、役員(取締役)の改選が必要となります。その際には、登記を行う必要があり、ここでも登録免許税だけで1万円が必要となります。ただし、役員の任期を最長10年と長くすると、そこまで気にするほどの費用ではないかもしれません。が、忘れると、罰則規定もあるので注意が必要です。更に、個人事業主と異なり、法人となると税務処理・会計処理が複雑になりますので、ほとんどの場合は税理士との顧問契約が結ばれることになります。相場で言うと、年額でおそらく40万円~60万円程度はかかると思われます。

デメリット2 社内の事務作業が増える

 株式会社化すると、株主総会であったり、会計帳簿の記帳、社会保険の加入等、避けて通れない部分が増えてきます。そうなると、どうしても増えるのが、社内の事務作業です。会社を設立すると必ず必要という意味でデメリットにあげました。

 個人の場合、簡易簿記といって、 損益(儲け)だけを把握する方法が認められていますが、 法人の場合、損益だけでなく資産・負債などの残高の管理が必要です。 また、社会保険の加入等も必須になるなど、それに伴う管理や手間が間違えなく増加します。

 また、会社の移転や決算には、株主総会を開いての決算報告や総会議事録等の作成が必須となります。

デメリット3 知識が必要になる

 デメリット1でも書きましたが、法人の運営に携わるためには、広く深い知識が求められます。例えば会社を作った後、会社法のルールや税金の手続き、社会保険手続き等を知らずに放置した結果、法律違反となり、後々知らなかったでは済まされない様な重大なケースも発生します。

 一例を挙げると、役員の任期切れ等です。本来、定期的に役員の重任の登記手続が必要ですが、うっかり忘れてしまったが故に過料(罰金の様なもの)が来たりするケースもあります。

 上記の様な例も含めて、普段から専門家にお世話になるか、自分で勉強する等の対策が必要です。わからないことは全部、専門家にお世話になる方法もありますが、その場合、費用的にも高額になる場合もありますので、ある程度勉強して自力で解決するバイタリティーも必要になるでしょう。

デメリット4 健康保険料+厚生年金保険料の支払いが発生

 先程は、メリットして記載しましたが、法人化によって健康保険料+厚生年金保険料が必要になってきます。未加入のまま法人で事業を営むことはできません。会社側としては、必ず費用が発生しますので、デメリットとして記載しました。法人化後、社会保険への加入し、複数の従業員を雇用するとなると、保険料の支払いは結構大きな支出になります。その点の注意は必要です。

デメリット5 会社の解散は、時間も手間がかかります。

 会社を解散するには、取締役会及び株主総会において、会社を解散する決議します。それを受けて会社の解散の登記を行います。なお、多くの会社が解散の登記までしておいて、後はそのままにしておくという手法をとることもあります。これは、解散の登記後の手続きが難しい一方、解散登記までしておけば、登記上、事実上会社を解散した様に見えるからです。

 解散後に会社の債権債務関係をきれいにするには、公告・財産整理の手続きなどが必要となり、これらの手続きを行わないと、最後の清算結了の登記ができないことになります。

 最後に、清算結了の登記まで完了して会社を法的にたたむことが完了します。なお、個人事業主・自営業者の場合は廃業届を税務署に提出することで、比較的簡単に事業をたたむことは可能ですが、会社はそうは行きません。もちろん、税務署等への手続きは会社の場合も必要となります。

株式会社の設立費用

費用項目 費用
定款認証印紙代                      電子定款の為、不要
登記申請費用+定款作成費用                      100,000円~
定款手数料                      52,000円程度
登録免許税                      150,000円
合計                      302,000円~

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